埼玉医科大学 臨床工学科
集中治療室の音環境はWHOが推奨する騒音レベルを大きく超え、患者さんの睡眠や心身に大きな負担となっています。騒音の一因として医療機器の駆動音の可能性が指摘されていますが、その対策は進んでいないのが現状です。私たちは医療機器による騒音の現状調査と、騒音低減に向けた取り組みを行っています。
病院内では様々な種類の「電波」が日常的に使用されています。しかし電波の種類や強さによっては、医療機器の動作を止めてしまうような大きな影響を及ぼすことがあります。そこで私たちは、様々な無線機器と医療機器の影響を調査するとともに、電波と医療機器が共存するためのルール作りを行っています。
医療は高度化する一方、現場にはまだ多くの「不安」や「非効率」が残されています。医療を受ける患者さんの療養環境、提供する医療者の労働環境、治療に必要な医療機器や病院設備、さらには在宅医療環境まで。本研究室では臨床工学技士の工学的背景・視点・テクニックを駆使し、様々な医療環境の諸課題の改善を目指しています。
研究室での活動を通じて、様々なものに興味・関心を持つ意識、そこから課題を発見し、自身の得意分野を活かして改善していく力を養います。臨床工学技士として社会に出た際、他者にはない「+αの能力」を持つことは大きな強みとなります。医療の現場で自信を持って活躍できるよう、その確かな基盤を一緒に築き上げていきましょう。
【受賞】
1.本塚旭, 野村ゆきね, 川邉学, 加納隆:第50回日本医療福祉設備学会 一般演題優秀演題賞「光学文字認識(OCR)を利用したECMO遠隔監視システム」, 2022年
2.本塚旭, 伊藤智保, 川邉学, 加納隆:第98回日本医療機器学会大会 若手奨励賞「電波強度の推移を利用した医用テレメータの電波切れ原因判別方法の検討」, 2023年
3.本塚旭, 加納隆, 川邉学:日本医療機器学会 2023年度論文賞「既存の電流監視装置の機能を拡大した電流モニタリングシステムの開発」, 2024年
【論文】
1.本塚旭, 木原静哉, 川邉学, 加納隆:既存の電流監視装置の機能を拡大した電流モニタリングシステムの開発, 医療機器学 93(4) 454-463, 2023年8月1日
2.本塚旭, 高橋咲菜, 川邉学, 加納隆:MCA無線の医用電気機器への影響調査と運用ルールの検討, 医療機器学 94(3) 317-326, 2024年6月1日
【著書】
1.本塚旭:心臓植込みデバイスと遠隔モニタリング, 医工学治療 30(3), 212-217, 2018年
2.本塚旭:臨床工学技士養成施設における心臓カテーテル教育の現状と課題, Clinical Engineering 32(1), 61-65, 学研メディカル秀潤社, 2020年
3.本塚旭:【病院内医療機器の遠隔モニタリング】ECMO遠隔モニタリングの試み, Clinical Engineering 33(2), 173-178, 学研メディカル秀潤社, 2022年
4.本塚旭:【ワンボードマイコンでつくってみよう】Raspberry Piを使用した電流使用量の遠隔モニタリングシステム, Clinical Engineering 34(9), 843-849, 株式会社Gakken, 2023年
5.本塚旭:【改正される病院電気設備の安全基準 JIS T 1022】電流監視システムの開発, Clinical Engineering 35(1), 48-52, 株式会社Gakken, 2023年
【著書(分担執筆)】
1.讃井将満:人体のメカニズムから学ぶ臨床工学 集中治療学, 316-321, メジカルビュー社, 2018年
2.加納隆, 廣瀬稔:ナースのためのME機器マニュアル 第2版, 56-65 69-75 199-203, 医学書院, 2021年