埼玉医科大学 臨床工学科
通常の血液透析療法(Hemodialysis:HD)は、身体から血液を取り出す針と浄化した血液を身体に戻す針の計2本を治療のたびに穿刺(針差し)しなければなりません。
シングルニードル透析では、通常2本使用する穿刺針を1本だけ使ってHDを行う方法です。患者さんにとって、針差しが1回で済むため一見良い方法に思えますが、通常のHDに比べて透析効率が悪く、ほとんど普及していなのが現状です。
当研究室では在宅透析やオーバーナイト透析など、今後多様化する治療形態に対応できるよう、シングルニードル透析の透析効率の向上を目的とした研究に力をいれています。
シングルニードル透析の普及を妨げる原因は通常透析の比べて圧倒的に透析効率が悪いことです。そこで透析効率を向上させるにはどうしたらよいのか?シングルニードル透析の基礎的研究から透析効率を向上させる、キーポイントは①再循環の抑制、②実血流量の増加であることが分かっています。そこで再循環を抑制し、実血流量を向上させる装置を開発しました。現在、より透析効率の向上を目指し、開発した装置の改良を重ねています。
当研究室では主に血液浄化や人工呼吸に関連する装置の原理と構造を理解して、より適切な運用方法や操作方法などを模索しています。また装置性能をより高性能・高機能化および効率化を目指し、様々な改良や新しい装置の開発を模索しています。
研究プランを建てて、いざ実験開始!となったき「あれ、上手く動かない!」「装置が停止するんだけど?」「データがばらついてしまう!?」…と、トラブルは大なり小なり発生します。そのトラブルに対して対策を考えて、再度実験して・・・、で、またトラブルが~!といったことは良くあります。研究は試行錯誤を重ねていくものです。頭をフル回転させ、手を動かし、悩んで苦労して・・・。でもその苦労を乗り越えて、得た経験と知識は決して無駄になりません。また苦難を乗り越えた体験も自身の財産になります。研究?面倒だよね、と思わず、是非一緒に研究を楽しみましょう!
シングルニードル透析に関する研究
<論文>
1. 三輪 泰之, 吉野 達也, 山下 芳久:シングルニードル透析における設定条件が再循環に及ぼす影響に関する検討. 医工学治療35巻2号 Page81-88(2023)
2. Yasuyuki Miwa、 Manabu Kawabe、 Yoshihisa Yamashita、 Takashi Kano: Device trial to improve blood flow rate with controlled pressure for blood flow at venous side in single needle dialysis. IFMBE Proceedings 51: 1375-1378 (2015)
<学会発表>
1. シングルニードル透析における再循環低減のための装置の検討(第2報). 第70回日本透析医学会学術集会, 2025
2. シングルニードル透析における再循環低減のための装置の検討. 第69回日本透析医学会学術集会, 2024
3. シングルニードル透析における透析効率向上の検討. 日本医工学治療学会第37回学術大会, 2021
4. シングルニードル法における再循環に関する検証. 日本医工学治療学会第35回学術大会, 2019.
5. シングルニードル透析における予測血流量と実血流量の比較検討. 日本医工学治療学会第33回学術大会2017
6. シングルニードルにおける設定条件の違いによる再循環の評価. 第61回日本透析医学会学術集会, 2016
7. シングルニードルの透析効率を向上させる装置の試作. 第58回日本透析医学会学術集会, 2013
8. シングルニードルにおける回路コンプライアンスの違いによる血流量の検討. 第52回日本透析医学会学術集会, 2007